会長挨拶

テーマ「古都奈良で拓くライフスタイル医学の未来」

この度、第10回日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会年次学術集会を奈良で開催することになりました。テーマは「古都奈良で拓くライフスタイル医学の未来」です。

本学会の学会名にもある「生活習慣病」という用語は適切な生活習慣を選択することによって予防が可能であるという概念に着目したもので、生活習慣に基づく疾病対策を推進するために行政的に導入されました。一方で生活習慣のみの重要性を強調する予防教育がバランスを欠き、個人に発病の責任が有ると短絡するスティグマに繋がった弊害は大きいとの批判が有ります。そこで本学会では、生活習慣病に代わる用語として「ライフスタイル医学」を提案する意味でもテーマに含ませていただきました。また、日本においては少子高齢化が問題となっており、本学会の構成員に関しても若手研究者の割合が減少傾向にあります。学会の明るい未来を拓くために、若手研究者が活躍できるような学会にしたいと考えております。

私自身は長年、Patient-Reported Outcomeをテーマにして研究を行ってきました。本学会でも特別講演に京都大学の福原俊一先生をお招きしてPROをテーマにお話を賜ります。また、ランチョンセミナーでは糖尿病領域のPROの第一人者である石井均先生にもご講演頂く予定です。PRO研究の最前線を取り扱うシンポジウムも計画しております。

志賀直哉は随筆「奈良」の中で、「奈良は食ひものはうまい物のない所だ」とうたっており、奈良特産のうまいものについては期待できないかもしれませんが、昨年と同様の気候であれば奈良公園は紅葉が残っております。学会が奈良県で開催されることは稀であり、折角の機会ですので、大勢の方のご参加をお待ちいたしております。

第10回日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会年次学術集会
会長 林野 泰明

  • 天理よろづ相談所病院 内分泌内科 部長、糖尿病センター センター長